不眠や過眠の訴えに比べると頻度は少ないものの、睡眠中の寝ぼけや行動異常について悩みを持つ人も少なくありません。
「夜中に突然起き上がって徘徊する」、「夫が喧嘩している夢で怒鳴ったり、横に寝ている私
(妻)に殴りかかってくる」、「寝ている間に無意識に食べている」、「苦しそうに唸っているう
ちのおじいちゃんは夜になると目つきが変わり、訳のわからない行動をとるけど、翌朝はケロッと覚えていない」など、様々な寝ぼけの行動があります。
なかには危険な病気が潜む寝ぼけもありますので注意が必要です。
目次
睡眠時随伴症とは?
寝ぼけは睡眠時随伴症の一つと言われています。
睡眠時随伴症の症状は、錯乱性覚醒、睡眠時遊行症、せん妄、睡眠時驚愕症、ノンレム睡眠時の寝ぼけ、レム睡眠行動障害、睡眠時無呼吸症候群による寝ぼけ、悪夢・金しばり、睡眠関連唸り(カタスレニア)、睡眠関連摂食障害(寝ぼけ食べ)、せん妄、てんかんなど様々です。
ノンレム睡眠時の寝ぼけ
ノンレム睡眠からの覚醒時に起こる睡眠時随伴症は小児期に多くみられます。
ノンレム睡眠からの不完全な覚醒状態によって、寝ぼけや行動異常が現れます。通常、睡眠前半3分の1に起こり、本人には寝ぼけた記憶がありません。
小児期の寝ぼけは大きくなるにつれて消失していく場合が多いです。
錯乱性覚醒
錯乱性覚醒は、中途覚醒時に動作緩慢で意味不明な寝言を発し、無理に起こそうとすると不機嫌で、攻撃的に抵抗することがあります。
睡眠時遊行症
睡眠時遊行症は、睡眠中に起き上がり、うつろな表情で歩き回ったりや、トイレと勘違いして放尿してしまうあど不適切な行動がみられるため、安全確保が必要です。
睡眠時驚愕症
睡眠時驚愕症は悲鳴や恐怖感で急に覚醒し、その際に頻脈や発汗を伴います。
レム睡眠時の寝ぼけ
レム睡眠に関連した睡眠時随伴症(寝ぼけ)のうち、中高年で特に注意が必要なのは、夢の行動化がみられるレム睡眠行動障害(RBD)です。RBDは、夢の内容に一致して怒鳴る、殴る、蹴る、飛び起きるなど、実際に行動してしまう疾患です。
争う、闘うなど攻撃的な夢内容に伴うことが多く、その際に起こすと容易に夢を想起することが可能です。けんかの夢で、実際に怒鳴ったり、殴りかかる動作をしたり、何かに襲われる夢で、実際に横に転がって逃げるなどの行動をします。
レム睡眠行動障害は背後に病気が潜んでいたり、病気の前兆になったりするので、注意が必要です。
また、仮性レム睡眠行動障害として、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が原因で寝ぼけを引き起こすこともあります。睡眠時無呼吸症候群も危険性が高いため注意が必要です。
その他の睡眠時随伴症
睡眠関連唸り(カタスレニア)
睡眠関連唸り(カタスレニア)はレム睡眠の際(特に後半)深く息を吸った後、長い呼気の際に低く唸るような音声を発生します。
低酸素血症や睡眠構築への影響はありません。
睡眠関連摂食障害
睡眠関連摂食障害(sleep related eating disorder、SREDとも言います)は唾眠からの不完全な覚醒の最中に、“寝ぼけ食べ”をする障害です。
上記の睡眠時遊行症の一つとも考えられ、摂食したことをまったく思い出せない場合や、翌朝完全に目がさめてから思い出せる場合もあります。
きちんと調理して食べる場合もあれば、冷凍食品をそのままかじっていることもあり、起床時の胃もたれや体重増加を生じます。
中にはペットフードを食べていたり、洗剤や残飯など囗にしてしまう可能性もあるので注意しなければなりません。
てんかんによる寝ぼけ
てんかん全体の約3割で睡眠時に発作を生じ(睡眠てんかん)、そのうちの約半数が睡眠時のみに発作を生じる純粋睡眠てんかんに該当します。
夜間前頭葉てんかんでは、ノンレム睡眠からの覚醒障害と類似した寝ぼけを早することがあり、睡眠時随伴症と見分ける必要があります。発作のほとんどがノンレム睡眠期に生じ、レム睡眠で生じることは稀です。
せん妄による寝ぼけ
高齢者の寝ぼけ、夜間の異常行動は必ずせん妄を疑いましょう。
せん妄とは、高齢、脳器質性疾患(認知症など)、発熱や疼痛、種々の身体疾患、薬剤など様々な要因によって引き起こされる意識障害で、軽~中度の意識混濁に伴って、失見当識、記憶障害、睡眠覚醒リズムの障害、さらに幻覚や妄想、興奮状態などが現れます。
高齢者や認知症患者の夜間の異常行動や徘徊などはは、いずれもせん妄によるものです。
高齢者のせん妄では、以下のような様子が現れ、本人には状態変化の自覚や夜間問題行動の記憶はないのが普通です。
- 日常的な会話でもつじつまが合わず、レスポンスも悪い。
- ボーッとしている。
- 物忘れが目立つ。
- 表情が険しくなり、怒りっぽい。
- そわそわ落ちつかない。
家族にせん妄の疑いがあれば、すぐに受診を勧めましょう。
危険な寝ぼけに注意
以上が寝ぼけを引き起こす病気です。
睡眠中の寝ぼけや行動異常は、まずは本人や家族の人が怪我をしないよう安全確保することが第一ですが、なかには危険な病気が潜んでいることもあるので用心しましょう。
また、寝ぼけや行動異常がある場合、眠れないからと安易に睡眠薬を服用すると、事態の悪化をきたす場合もあるため十分に注意しましょう。