睡眠の主な役割
睡眠の役割には、「疲労回復」「健康維持」「記憶の整理・固定」があり、自律神経機能、内分泌(ホルモン)機能、免疫機能とも密接に関係しています。
毎晩の睡眠によって、日中アクティブに活動するための休息とメンテナンスが行われています。毎晩の睡眠の役割は、昼間の活動による心身の疲労回復と健康維持にあります。また、記
憶・学習にも重要です。
睡眠による疲労回復効果については、ぐっすり熟睡した翌日に心も体もリフレッシュすることでおわかり頂けると思います。反対に寝不足では疲れやすく、体調不良となり、いらいらしたり、ネガティブな思考に陥りがちです。
慢性的な不眠や睡眠不足では、生活習慣病やうつ病などに陥る危険もあります。
睡眠中には様々な働きによって日中の活動に備えた休息とメンテナンスが行われているのです。
睡眠と自律神経
覚醒から睡眠へ移行する際に交感神経活動は低下し 入眠後のノンレム睡眠期には副交感神経優位になります。体温も下降を続け、通常早朝4~5時前後の最低体温を迎えるまで、血圧・心拍数も低下します。その後。明け方に向かって体温は十。昇し。血圧・心拍数も上昇していきます、一方、睡眠開始後、約90分周期で現れるレム睡眠期では交感神経優位となり、血圧、心拍、呼吸変動がみられます。
また、睡眠中に急激に覚醒した際には、交感神経の働きによって頻脈を生じるため、注意が必要です。適切な睡眠がとれていないと、自律神経機能に影響を及ぼします。短時間の不眠や睡眠不足でも、交感神経活動の亢進によって、血圧や血糖上昇に影響を及ぼします。
睡眠とホルモン
睡眠は、ホルモン分泌とも密接に関係しています。分泌パターンによって睡眠依存性(眠ると分泌される)の強いホルモンと、概囗リズム依存性(体内時計による概日リズムに従って分泌される)の強いホルモンに分類されます。
睡眠依存性の強いホルモン
1.成長ホルモン
1日のうちに2~3時間周則でパルス状に分泌されますが、その大部分が徐波睡眠期に分泌されます。成長や組織の修復を担っており、「寝る子は育つ」というのは本当なのです。
2。プロラクチン
睡眠開始後に分泌が始まり、明け方起床前にピークに達し、起床後は急速に低下します。昼寝でも分泌量は増大し、夜間覚醒すると低下します。
概日リズム依存性の強いホルモン
1.メラトニン
メラトニンの分泌パターンは、体温リズムや覚醒度とほぽ逆転する形をとり、習慣的な就寝時刻の2時間ほど前より上昇し、最低体温の1~2時間前にピークとな呪 その後減少する明確な概日リズムを示します。メラトニンには、概日リズム調整と若干の催眠作用があり、メラトニンが含まれるサプリメントは概日リズム睡眠障害の治療に用いられます。
また新しいタイプの睡眠薬として、メラトニン受容体作動薬「ラメルテオン(ロゼレム)」なども発売されています。
2.コルチゾール、ACTH
コルチゾールには.抗ストレス作用、血糖上昇、抗炎症作用などがあり、明け方から午前中に分泌量が増えて、夕方から夜中に低下する明確な概日リズムを示し、ACTHも同様のリズムを示します。
睡眠と免疫
風邪を引くと眠くなる。という経験をお持ちの方もいらっしゃることと思います。これは、感染によって免疫応答が活発となり。マクロファージやT細胞から生産されたサイトカインによる徐波睡眠誘発作用によるものです。
徐波睡眠の出現は、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制します。免疫力を低下させる作用があるコルチゾールのレベルが上がりすぎないようにコントロールしている睡眠の機能ともいえます。
また、睡眠不足では、免疫機能が低下する可能性を示唆する報告もあります。例えば、睡眠不足の状態でワクチンを接種すると、その後十分な睡眠を確保しても、抗体反応の遅延が認められました。このように睡眠は免疫機能に深く関わり、さらにストレス反応との関係も注目されています。
睡眠と記憶・学習
以前より学習するとレム睡眠が増えたり、IQが高いとレム睡眠量が多いという報告があります。レム睡眠は覚醒状態に近い脳波を示し、夢の想起もしやすく、脳が発達する幼児期にレム睡眠量が多いことから、レム睡眠が記憶・学習に中心的な役割があると考えられていました。
しかし、近年の研究では記憶を司る海馬の活動はレム睡眠のみならず、徐波睡眠期にも活発となることがわかってきました。ラットの実験から、徐波睡眠期に不要な情報を除去しながらレム睡眠と共同で記憶の固定に関与しているのではないかと考えられ、徐波睡眠→レム睡眠という順番で記憶の固定処理をしていくという連続処理仮説も注目されています。
記憶テストを行った後に 覚鯉しているより睡眠をとったほうが成績が向上する報告もあり、毎日の適切な睡眠は記憶や学習に大変重要であると考えられてきています。
まとめ
以上のように睡眠は、自律神経の維持や、ホルモン分泌、免疫機能に深く変わっています。
健康維持や疲労回復、学習や記憶を効率的に行うためにしっかりとした睡眠をとらなければなりません。
過度に短い睡眠では、あらゆる活動に支障をきたしてしまうということなのです。