体の痒みや痛みで眠れない場合の睡眠薬の服用例を紹介します。
痛みや痒みで不眠になってしまった場合、眠っているときには症状が楽になるため、睡眠薬が増えてしまいがちです。睡眠薬の増量には十分注意しなければなりません。
体の痒みで眠れない場合の睡眠薬
25歳男性大学院生。アトピー性皮膚炎。
もともと、アトピー性皮膚炎の既往があったが、大学院入学後にアトピー性皮膚炎が悪化。
通院中の皮膚科から処方された抗ヒスタミン薬を服用しても瘙痒感(かゆみ)で眠れず、ようやく午前4〜5時になって入眠する。
痒みで睡眠がとれないため、朝はなかなか起床することができず、授業の遅刻や欠席が増えている。
痒みで眠れないときの処方例
・ゾピクロン(アモバン)7.5mg錠1回1錠、1日1回、就寝前
・ヒドロキシジン(アタラックス)25mg錠1回1錠、1日1回、就寝前
痛みで眠れない場合の睡眠薬
70歳女性。関節リウマチ。
両足の足関節の疼痛(痛み)が1日中続き、この痛みで入眠困難や中途覚醒を生じ、熟睡できない。
睡眠時間は3〜4時間程度で倦怠感が強く、昼間も臥床して(寝転がって)いることが多い。もう少し睡眠がとれれば、痛みは軽減するはずなので、何とか眠れるようなりたい。
痛みで眠れないときの処方例
・ゾピクロン(アモバン)7.5mg錠1回1錠、1日1回、就寝前
・プレガバリン(リリカ)25mg錠1回1〜2錠、1日2回、朝と就寝前
痛みや痒みがある場合の睡眠薬
瘙痒(かゆみ)や疼痛(痛み)で長時間にわたって眠れない場合、ゾルピデム(マイスリ一)など超短時間作用型の睡眠薬では入眠までに薬剤の効果が消失してしまって、効果が得られない場合もあるので、短時間作用型のゾピクロン、エスゾピクロン(ルネスタ)が処方されます。
ヒドロキシジンのような抗ヒスタミン薬は抗瘙痒作用と鎮静作用をもつため、上で挙げたのような痒みやアレルギーの患者さんではよく使われますが、抗ヒスタミン薬の催眠作用は耐性を生じやすく、また、持ち越し作用による日中の眠気や倦怠感につながる場合もあるので注意が必要です。
また、アトピー性皮膚炎の患者では睡眠覚醒リズムが後退している場合も多く、こうした場合にはラメルテオン(ロゼレム)が有効な場合もあります。その場合は睡眠覚醒リズムの前進作用が期待できる入眠4〜6時間前に服用時刻を設定し、低用量(0.25〜0.5錠)にします。
2つ目に挙げた慢性疼痛(痛み)の患者さんでは、末梢神経障害性疼痛の治療薬であるプレガバリンや慢性的な痛みの軽減と鎮静作用をもつ、三環系抗うつ薬やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬のデュロキセチン(サインバルタ)の併用が考慮されます。
なお、プレガバリンには筋弛緩作用があり、睡眠薬と併用する場合には転倒を生じやすくなるため、高齢者では低用量から開始した方がいいでしょう(例えば1日50〜100mg)。
睡眠薬の増量に注意
痛みや痒みの強い人は、睡眠中はその苦痛から解放されるのでなるべく長時間熟睡できることを希望します。
医師がその望みを叶えてあげたいと思うと、結果として睡眠薬が増えてしまうことがあります。
しかしながら、睡眠薬は鎮痛薬と同じで耐性や依存性のある薬剤です。一方、痛みや痒みがあると、外出など社会的な行動が困難となり、日中も自宅に閉じこもって寝てしまう傾向となり、睡眠覚醒リズムも乱れ、この結果、夜間の不眠という悪循環に陥りがちです。また、心理的にも自宅に閉じこもると痛みや痒みに余計にこだわる時間が増え、その悪循環はさらに強化されます。
眠れず辛くても規則正しい時間に起床し、睡眠薬の用量を維持したままできるだけ元の日常の生活を送るように努力することが、この悪循環から抜け出して不眠を改善するためには必要となります。