毎日の睡眠不足は蓄積していきます。これを「睡眠負債」と呼びます。
一日に必要な睡眠時間を3時間ずつ削ると、8日で24時間になります。
そうすると、一日完全徹夜をしたのと同じ程度に作業能力が落ちる可能性があるのです。
睡眠負債とは
本来7時間の睡眠が必要な人が、様々な事情で睡眠時間を4時間に削る場合などが睡眠負債に相当します。
多くの人は、この溜まった睡眠負債を週末に爆睡することでまとめて返しています。
睡眠負債が溜まっているのに、早朝からゴルフや釣り、山菜採りのために早起きして車で遠出をするのは、徹夜明けで蓮転するのと同じくらいに危険なことです。
実際に、徹夜とアルコール摂取の運転に及ぼす影響を比べた研究があります。
徹夜は飲酒運転と同じ危険性
その研究の方法を紹介しましょう。この研究では、一人の被験者を運転シミュレーターに乗せて、その運転能力を繰り返し測定します。
まず、覚醒している時間を次第に延長して、その連続覚醒時間と運転能力の低下の程度を調べます。次に飲酒させて血中のアルコール濃度とその運転に与える影響を調べます。
その研究によると、徹夜後の運転能力の低下の程度は、飲酒運転のそれに匹敵するとのことです。
最近、道路交通法が改正され、事故を起こした時に飲酒していた、あるいは、薬の影響で運転に支障が出ていたと判断された場合には、今まで以上の厳罰に処せられることとなりました。
しかし、寝不足を計る機械はありません。飲酒運転と同じくらいに危険な徹夜明けの運転能力低下が放置されているのは問題です。
時間帯による眠気
眠気に大きな影響を与える条件は、睡眠不足の程度だけではありません。
もう一つの大きな要因は「時刻」です。すなわち、だれでも眠くなる時間帯があるのです。
眠気のピークは、午前4時頃と午後の14時〜15時頃です。重大な交通事故である死亡居眠り運転事故の発生も、この時間帯にピークがあります。
とくに大きな事故が起こりやすいのは、最も交通量の少ない時間帯である夜明け頃です。ゴールデンウィークや年末の帰省に乗用車を利用する方はご注意ください。
午後の眠気のピークはちょうど昼食後の時間帯です。食事の影響もありますが、食事を抜いてもこの時間帯の眠気は残ります。
不眠症と睡眠負債
健康な人が睡眠不足に陥ると、どこででもすぐに眠ってしまいます。
それに対して、不眠症の人は睡眠負債をたっぷり溜め込んでいるほずにもかかわらず昼寝ができません。
それなのに、大事な会議や観劇の最中には不覚にも居眠りをしてしまうのです。
枕が変わるとますます眠れなくなるのかというと、そうでもありません。
不眠症の患者さんは旅先や病院のベッドなど、普段の寝室とは異なる環境ではかえって眠れることも多いのです。つまり眠ろうとすると眠れず、眠ってはならない場面では不覚にも眠ってしまうのです。
不眠症の患者さんには、夜間のみならず昼間にも不安と緊張がみられます。患者さんの多くは、昼間から「今夜は眠れるだろうか、眠れないと大変だ」と心配しています。
眠れないことについての不安やつらさが強いのに加えて、眠気や疲労感、いらいら感、不安感を感じ、讓カや作業能率が低下していると自覚しています。
その割にはミスも少なく、作業能率もあまり低下していないのが特徴です。