睡眠薬を飲んで数時間で車を運転し、事故を起こす例があります。
睡眠薬を飲んでからの運転は居眠りによる事故を引き起こすことがあり、睡眠薬を飲むタイミングを十分気を付けなければなりません。
睡眠薬服用後に事故を起こした男性
55歳男性。
用事があり午前5時に起床するため、かかりつけ医から不眠時に処方されていたブロチゾラム(レンドルミン)0.25mg1錠を午前0時に服用したが入眠できないため、午前2時にブロチゾラム1錠を追加服用した。
居眠り事故
午前5時に起床し、眠気は多少感じていたが、車を運転。
運転中に居眠りを生じ、あぜ道から田んぼに転落した。幸い、軽い外傷ですんだが、睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシーなどの睡眠関連疾患を心配して、睡眠の専門外来を受診した。
普段は眠気の自覚はなく、激しいいびきの指摘はない。
睡眠薬と車の運転
日中の眠気には睡眠不足、疲労、薬剤、睡眠時無呼吸症候群など睡眠問連疾患など多くの要因が絡んでいることが多く、居眠り事故を生じた場合に、その原因を究明することは困難ですが、上記の居眠り事故は睡眠薬の服用が原因と考えてよいでしょう。
上記の男性が服用したブロチゾラムだけでなく、睡眠薬の添付文書には、「睡眠薬の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力などの低下が起こることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること」と記載されています。
すベての睡眠薬が自動車の運転に影響
睡眠薬には自動車の運転に影響を及ぼし、ベンゾジゼビン系薬剤を服用した場合には交通事故が増加することや、さらには短時間作用型で筋弛緩作用の少ない非ベンゾジゼピン系のゾピクロン(アモバン)を服用した患者でも交通事故が4倍になるという報告もあります。
またこれまで、非ベンゾジアゼピン系の超短時間作用型の睡眠薬のゾルピデム(マイスリ一)では車の運転には支障が少ないと考えられてきましたが、最近の研究報告からは、ゾルピデム(マイスリ一)やメラトニン受容体作動型のラメルテオン(ロゼレム)でも、薬剤を服用した翌朝においても運転に対するリスクのあることが報告されています。
すなわち、患者さんの生活も考えると辛いのですが、超短時間作用型を含めすベての睡眠薬に関して、添付文書の記載どおり、睡眠薬を服用した翌朝では自動車の運転に気を付けてもらわなくてはなりません。
上記の例では臨床用量を超える睡眠薬を服用したことや、睡眠薬を追加服用してから車を運転するまでの時間が短いことが居眠りに結び付いたと考えられます。
睡眠薬を服用してからどの程度の時間、運転を回避すればいいのかその判断は難しいですが、少なくとも朝早くの車の運転は禁止するべきでしょう。
運転前の睡眠薬は厳禁
また、薬理的には超短時間作用型の睡眠薬の方が中・長時間作用型の睡眠薬に比べて車の運転に支障の生じる時間がより短いと考えられますが、超短時間作用型であっても睡眠薬の血中濃度の推移には個人差が大きく、睡眠薬の効果が長期間影響が残存する可能性もあるので注意が必要です。
車を運転するまで数時間しかないからといって、少しでも睡眠時間を増やそうと睡眠薬を服用するのは厳禁です。
睡眠薬の残遺による眠気だけでなく、睡眠時間が短いと事故のリスクを増加させ、相乗的に交通事故が生じやすくなります。
特に、慢性的な睡眠不足の方は眠気を自覚していない場合もあり注意が必要です。