妊娠中に睡眠薬を飲んでも大丈夫？胎児に危険のある薬の一覧と考え方

妊娠中の女性が睡眠薬や精神安定剤を使用してもいいのか、それとも使用してはいけないのかを知りたい方もいらっしゃるでしょう。

ここでは、妊娠中に気を付けなければならない睡眠薬や精神安定剤の種類一覧や、薬への考え方を解説します。

妊娠中に注意するべき（胎児に影響がある）睡眠薬と精神安定剤一覧

まず、ご紹介するのが、妊娠中に注意するべき（胎児に対する催奇形の可能性がある）睡眠薬と精神安定剤の一覧です。

胎児に危険のある薬一覧

原則的には妊娠中の睡眠薬は控える

上記の一覧の薬剤に関していえば、妊娠中に服薬すると胎児に及ぼす影響があり、胎児に対する催奇形がある可能性が高いということです。

ベンゾジアゼビン系睡眠薬は胎盤を通過しやすいために、妊娠期間を通して服薬には十分な注意が必要です。

また、出産後の授乳に関しても母乳へ移行することが確かめられており、ベンゾジアゼビン系睡眠薬を服薬する母親は、新生児への授乳を行わないようにするのが一般的な考えです。

以上のことから、可能であるならば、妊娠中、授乳中は睡眠薬を服用しないほうがよいでしょう

基本的には、不眠症の治療中に妊娠したことがわかった場合、産婦人科の主治医の許可がない限り、睡眠薬や精神安定剤は一切処方しないことが多いです。

催奇形の可能性など、妊娠への影響がきわめて低いとされる薬剤であっても、心療内科や精神科で治療を行っている患者さんは総じて不安が強いため、不安が治療や妊娠の継続に悪影響を与えかねないということを危惧するためです。

また、胎児への影響が完全にないと言い切ることはできません。たとえば、外出すれば交通事故に出合う確率はゼロということがないのと同様です。

わずかに胎児の危険がある場合でも

また、「影響がほとんどない」という場合でも、服薬するかしないかの判断の根拠は、数学の確率論の問題になります。

たとえば、わずか1%の確率で問題が生じる薬剤があるとしましよう。患者さんにそのパーセンテージを説明すると、ある人はわずか1%であっても可能性はあるので、服薬に関しては「不安で仕方ない…」といいます。

ある人は20%の確率で問題があるときいても、「80%は問題が生じないのだからよいだろう」といいます。

あるパーセンテージが高いか低いかは客観的に判断するのが難しく、個々の主観がどうしてもそこに入ってしまいます。状況によって数字の捉え方は大きく変化していくものです。

妊娠中の睡眠薬と精神安定剤の考え方

医師が処方する医療用薬剤には必ず製薬会社が作成する添付文書があります。その添付文書には起こり得る可能性のある副作用が列挙されています。 

妊婦に対する副作用

妊娠に影響を与える可能性のある薬剤の添付文書には、

「妊婦又は妊娠している可能性がある婦人には投与しないことが望ましい。また、投与中に妊娠が判明した場合は投与を中止することが望ましい」

または、

「本剤投与中に妊娠が判明した場合には、投与継続が治療上妥当と判断される場合以外は、投与を中止するか、代替治療を実施すること」

などと書かれている薬もあります。

つまり、妊娠が判明すれば投与を中止すべきであるが、一部の薬剤に関しては、薬剤の継続によって患者さんが得られるメリット(不眠症、心の病などの治療)が、投与中止によって得られるメリット(妊娠への影響の軽減)よりも明らかに高い場合に限って、投与を続けることもあるということです。

薬の投与はケースバイケース

たとえば、統合失調症の治療中の患者さんに、妊娠の発覚が理由で薬剤投与を中止した場合、幻覚妄想が激しく悪化し、出産するどころではなくなるであろうと推測できるケースでは、投与を続けることもあるかもしれません。

投与の継続により妊娠、出産への悪影響の可能性があるとしても、それ以上の好ましくない結果が明らかに予測できるということです。

そして、これらの判断はケースバイケースであるがゆえに、文章の形で「…の場合は投与を中止」「…の場合は投与を継続」というクリアなラインを引くのは難しいのです。

いずれにしても、不眠や心の病に限らず薬剤治療中に妊娠がわかった場合には、主治医とよく相談することが大切です。