腎臓に持病を持つ方の睡眠薬の処方例です。
腎臓に障害がある場合に長時間作用型の睡眠薬を通常量(またはそれ以上)で服用することは危険です。
腎臓に持病を持つ男性の症例
73歳男性。腎臓病あり。
もともと高血圧のため近所の病院で治療中であった。半年前の採血では血清Cre1.2mg/dLであった。
1週間前から発熱と下痢のため、5kgの体重減少と、食欲不振、倦怠感がみられたため救急センター受診。採血にて血清Cre5.0mg/dLと上昇を認め、緊急入院となり輸液が開始となった。
輸液と利尿薬により、次第に利尿がつき、入院1週間後には血清Cre2.5mg/dLまで改善してきていた。看護師よりここ数日、入眠困難があるとの報告があり、男性からも睡眠改善の希望があった。
腎臓に病気がある場合の睡眠薬の処方例
腎障害の場合の処方例
・ゾピクロン(アモバン)7.5mg錠1回0.5錠、1日1回、就寝前
睡眠薬の処方
薬剤には主に肝での代謝に依存している脂溶性薬剤と、主に腎での代謝に依存している脂溶性の低い薬剤とがあります。
脂溶性薬剤は体外への排泄性を高めるために主に肝で水溶性の高い物質に変換され(第I相反応、第Ⅱ相反応)、薬理活性も弱められてから、尿(腎)および胆汁(肝)から排泄されます。
一方、脂溶性の低い薬剤はそのままの形態で主に腎から尿に排泄されて腎機能障害の影響を受けやすいため、これらの薬剤の使用はなるべく避けるべきです。ただし、ベンゾジアゼピン系薬剤を含む多くの向精神薬(睡眠薬)は脂溶性が高い薬剤です。
腎障害時には血漿蛋白量、蛋白結合率、分布容積などが変化するため、個々の薬剤の特徴にあわせ投与量、間隔を調整する必要があります。
一般的には、ゾピクロンなどの短時間作用型や中時間作用型の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬やベンゾジアゼピン系睡眠薬を通常量の1/2〜1/3から開始する方が安全です。